2011年8月30日火曜日

厚み

いよいよ僕自身のαMでの展示も近づいてきました。現時点の僕の力量からすれば、大掛かりなものになるとは思います。京都→東京への輸送の段取りだけで大変そうですが、頑張ろうと思います。

再魔術化、重なり合うレイヤー、どちらもとても重要な言葉のように思います。

僕個人は科学的思考というものは、ある仮説に対し、その仮説を裏付ける観測が出来るだけ多くある場合、それが限りなく真実に近いと言える、と言う統計的手法のイメージが強いです。勿論昨今の科学はもっと進歩、変遷しているのでしょう(ustreamでかの児玉教授が言っておられた、パラメーターの多少の話が興味深かったです)が、一般的理解と言う意味では僕の持つイメージに近いかも知れません。物質の大小を計る物差しは、思考の上ではどこまでも任意に大きく広げてゆけるし、その逆も然りで、想像の上ではスケールと言うものは無限に続く訳ですが、統計学的に考えた場合「真実」と「限りなく真実に近い」はどれだけ観測数を増やしても、その間にある差は永遠に埋まらないばかりか視点が微視的になってゆけば行くだけ、その差は広がってゆくような感覚に陥るかもしれません。僕はそこが面白いとも思うのですが。

レイヤーと言う言葉を使う場合、ある世界の中にある異質なもの異質な層の分化←→重層と言う両方向性が思いつきます。物理的な現実における各々の意味のレイヤーは、視点のミクロマクロの程度により一つのレイヤーがさらにいくつものレイヤーに分かれて見えたり、またレイヤー自体に凹凸があり(これを僕は今厚みと表現しようと思いますが)、実写映像はそれが厚さゼロに圧縮されてしまうような奇妙なものだと思っています。イメージ自体が確固として存在するのでは無く、色の違う光が物質面を照らし出していると言うのが、結局のところ実際に起こっている全てでもあります。前回映像を絵の具のように、と言いましたが、他に自分のアプローチについて言える事があるのなら、ある実写イメージに別の実写イメージを重ねる事で、不思議に圧縮が解かれてレイヤーが分離し、さらにその隙間に何ものかが流れ込んで新たな厚み=奥行きを獲得する瞬間を待っているのだ、、、と言えるかもしれません。

程よく文章にも再魔術をかけたところで(?)、今回はこの辺で失礼します。


宮永亮

2011年8月15日月曜日

ロンドン生活/夏の終わり



こんにちは。林加奈子です。ロンドンは大学が終わり夏休みに突入しました。街のムードはバカンスで中心街は世界中からの観光客で大混雑しています。そんな中、先週ロンドン北部で勃発した暴動があちこち飛び火して一部大変な騒ぎになっていました。私が今間借しているロンドン東部にあるスタジオの真下で騒ぎが起こった時は一瞬心臓飛び出るかと思いました。そこで暴れていたのは本当に若いキッズの集団で、今目の前で起こってる状況についていけず。一瞬にしてスタジオ近辺が戦闘モード。でも今はもうロンドンの暴動は収まったようです。

あとから知ったロンドン炎上の映像や写真のニュースと実際にここで感じる空気との温度差、怯える人々と冷静な人たちのギャップを目の前に、このちょっと激しすぎるいろんな人間と状況のギャップに私の頭はクラクラします。きっとこの暴動が拡大した原因にはイギリスの移民、人種、マイノリティーとか貧困の問題がぐちゃぐちゃに絡み合ってて、原因は私が思うよりずっと暗くて根深いもんだと感じます。社会っていろんなレイヤーで成り立っていて、もちろん私のいるレイヤーとこの現状のレイヤーは全然別レイヤーで存在していて、でもそんなレイヤーが何層にも重なりあった同じ社会に住んでるんだしと思うと、このイギリスの現状に実際凹む。
こんなことが起こった先週の後半。中心街はすでにまたいつも通りの大混雑で、暴動のあった地域はまだお店が開いてなかったり。私はここで気をつけながら暮らしていくしかないんだなぁと思う。世知辛い世の中だぁ。

ここ最近、写真/パフォーマンスを試し始めていて、ちょうどこの騒ぎがあった日も撮影に出掛けていたけど、この日の昼に入ったカフェの近くで突然騒ぎが起こったから、店の中に避難させられてしばらく外に出られなかったり、完全防備された戦車みたいな黒色の車が5、6台くらい目の前を通り過ぎて行ったり、スーパーの扉のガラスが割られていて、(普段からガラスが割られているのはよく見る。この時はそこまで気にしていなかった)不穏な空気がいつもより漂っていたからこの日は撮影するのをやめてスタジオへ戻ったのが本当によかった。
虫の知らせと言うか、しかしこんな断片を立て続けに見ると、さすがに外出する気も萎えたのが正直なところ。それでもまたこれから出来る限り外出する、気をつけながら出て行くしかない。

作品の試作については、ロンドンの街の中に無数に張り巡らされている「柵」と、道端に落ちてる「物体」に注目しながら鋭意作成中